睡眠について
睡眠衛生教育:岡島義
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睡眠衛生とは,睡眠に影響を与えるものや環境※を整える方法のことで,それによって睡眠の質(例:休養感,不眠感),量(例:実際の睡眠時間),リズム(例:就床―起床時刻の安定)の安定・改善を目指すことを指す。下記に挙げたものの中で,十分に実践できていないものがないかチェックし,日常生活に取り入れてみてはいかがだろうか。
※環境については,睡眠環境(光と温熱)を参照のこと。 - 1. 嗜好品
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睡眠に影響を及ぼす代表的なものが,カフェイン,アルコール,ニコチンである。
カフェイン コーヒーやエナジードリンクが有名であるが,お茶(玉露やウーロン茶)や紅茶にも含まれている。カフェインには覚醒作用や利尿作用があるので,寝つきの悪化や中途覚醒の要因となる。カフェインの代謝には個人差に加え,年齢差(高齢になると代謝が落ちる)もあることが知られているが,カフェインの影響がなくなるのは,摂取後数時間はかかる。また,むずむず脚症候群や睡眠時歯ぎしりなどがある場合は,症状を悪化させるという報告もある。眠気覚ましとして利用されることが多いものの,就床時刻に近いほど睡眠に影響を及ぼすので,夕方以降の摂取には注意が必要である。
アルコール 摂取後は,入眠を促進する効果があるが,睡眠の後半には,中途覚醒が増加し,全体の睡眠としては問題を引き起こす。深酒をすると中途覚醒なく眠れる場合もあるが,多量(0.75g/kg以上)のアルコール摂取はレム睡眠を大幅に減らすことが報告されている。一晩のレム睡眠の量が少ないと、将来の死亡リスクがあがってしまうため,飲酒量には注意する必要がある。アルコールの代謝にも個人差があるため,アルコールパッチテストなどで確認しておくのもよいかもしれない。アルコールは耐性がつきやすいため,摂取量が増える可能性が高くなる。寝るための利用は避け,医師に相談することをお勧めする。
ニコチン たばこの種類(紙巻,加熱,電子)に関わらず,ニコチン摂取には覚醒作用があるため,睡眠前の喫煙によって寝つきの悪化や中途覚醒の要因になる。ニコチンの影響がなくなるのは,摂取後数時間はかかるので,「寝る前の一服」はもちろんのこと,夕方以降の喫煙にも注意が必要である。ただし,習慣的にタバコを吸っている喫煙者は,たばこを控えると、離脱症状(不安・抑うつ・不眠)がでることも理解しておくべきだろう。
- 2. 身体活動と入浴
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日中の身体活動も睡眠と深く関わる。特に,身体活動のタイプや強度,実施時間,タイミングなどが大切になる。身体活動のタイプとしては,有酸素運動(例:ジョギングなど)が寝つきを良くし,睡眠時間を増加する。筋トレも有効である。そして,息が弾み汗をかく程度(中強度)以上の身体活動を1日合計60分程度実施すると睡眠問題の改善に有効である。タイミングとしては日中がお勧めであるが,就寝の2〜4時間前の身体活動も睡眠改善に有効である。また,就寝の1〜2時間前に入浴すると,しなかった時よりも寝つきが良くなる。これは,手足が温まることで深部体温が放熱するためである。冷え性の人は,手足が温まるように,入浴後に靴下をはいたり,寝床に湯たんぽなどを入れて放熱する工夫をすると良いだろう。
- 3. 食事
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朝食は,体内時計の調整に欠かせない。加えて,就寝前の夜食や間食は体内時計を乱す。寝つきの悪化,睡眠不足,睡眠休養感の低下を防ぐためにも,朝食をしっかりと食べるとともに就寝直前の夜食・間食は避けるべきである。
- 4. 長寝
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体の回復や休養感は,睡眠を取ることで得られる。言い換えると,「眠れなくても横になっていれば体が休まる」ことはない。反対に,寝床で横になって考え事をしたり,スマホを見たりして目が冴えることを続けると,「横になる=覚醒」という「くせ」が体に染みついてしまう。結果として,寝つきが悪くなる。また,長寝(実際の睡眠時間以上に寝床にいること)によって,寝つきの悪さや中途覚醒,休養感の低下が出現する。特に,高齢者の場合は,8時間以上の長寝に休養感の低下が合わさると死亡率が増加するという報告もある。「寝床は寝るために使う」ことを習慣づけるとともに,臥床時間の目安を1週間の平均睡眠時間(実際に眠っている時間)+30分程度に保つと良いだろう。
- 5. 昼寝
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日中の眠気を飛ばす方法として,昼寝(仮眠)はかなり有効である。ただし,取り方が重要である。長く取り過ぎると,昼寝から目覚めたときに,けだるさや眠気の増加が出てしまう。加えて,夜の睡眠を悪化させてしまう。これらの悪影響を取り除き,日中の眠気を解消するためには,15時までに30分以内の昼寝をするのがお勧めである。高齢者の場合,長い昼寝や頻回な昼寝は,夜間の睡眠を悪化させたり,認知機能の低下を高めることが報告されている。ただし,昼寝が苦手な人やうまく出来ない人は,昼寝をすることがストレスになることがあるので,無理にする必要はない。
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参考:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」